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114.高温治療 [魚の病気]

今日は高温治療のメリットとデメリットについて少し考察してみようと思います。 白点病やヘキサミタ症などの寄生虫疾病の治療、カラムナリスやエロモナスなどの細菌性疾病の治療に有効と言われ「病気=高温」という公式が当たり前になっていますが、はたしてどんな効果があって、どう作用しているのでしょう!? 誰でもやってる高温治療だけど、案外、その意味を理解することなく実行している場合も多いのではないでしょうか!?

私が考えるに水温を上げる理由は2つ。 1つは高温にすることで魚の代謝を上げる。そしてもう1つは高温にすることで寄生虫や病原菌の活性を鈍らせる。 しかし私が考察するところ、高温治療の本来の意味は前者ではなく後者での意味合いが強いのではないかと考えています。 魚は変温動物なので、水温を上げれば、その体温も上がります。これを利用して細菌や寄生虫の活性や増殖をとめることで、今以上に悪化させない。そして今魚に感染してる細菌や寄生虫を弱らせるというのが高温治療の本当の意味だと考えています。


photo: EF-S 60mm Macro  F2.8    1/30sec  ISO-800 



病気別に考えてみると・・・・。
◆カラムナリス(尾腐れ・エラ腐れ・体表のただれ)◆
これは細菌性の疾病ですが、27℃以上の水ではカラムナリス菌の活性が極端に鈍り、30℃以上であればほとんど生きていくことができません。 またph6.5を境に、それより低いphだとその増殖が極端に低下します。

◆エロモナス(穴あき・松かさ・腹水など)◆
この病気に関しては、高温治療や塩水治療など、水質の変化だけでは殆ど効果はありません。 水温に関して言えば、0℃~40℃まで増殖可能だし、phも6~11、塩分濃度0~4%まで耐性を持ち、 打つ手がないのが現状です。 魚の飼育で最悪の細菌と言えるものの1つなので、若干活性が鈍る32℃くらいでphを6以下に落とし、抗生物質や専用の薬剤での治療をするしか対応できません。

◆白点病◆
原生動物の繊毛虫であるイクチオフィチリウスという虫が寄生することにより発病するのですが、この繊毛虫は1個の成虫が1時間に3500個ぐらいに分裂し爆発的に増殖します。しかしこの繊毛虫が活発に活動するのが3℃~25℃。 2℃以下、または27℃以上では活動が極端に鈍り32℃を超えるとほとんど分裂できないと考えられています。 

◆ヘキサミタ症(拒食・頭部穴あき病)◆
ディスカス飼育でよく問題とされる頭部穴あき病、拒食、白糞の原因と考えられているヘキサミタ症。これも寄生虫性(鞭毛虫)の疾病ですが、ヘキサミタも白点同様32℃を境にその分裂・増殖が極端に鈍ります。限界水温を33℃と考え、フラジールや駆虫ハンバーグの処方で改善される場合もあります。 エルバージュも場合によっては効果があります。
※ヘキサミタ症に伴う拒食や白糞は、そう頻繁におこるものではありません。頭部穴あきが出ればヘキサミタの可能性が高いですが、単に拒食や白糞だけでは殆どの場合ストレスだと思いますので若干水温を上げる(30℃前後)、照明を消す、隔離する・・・などの処置で改善すると思います。

このように細菌や寄生虫の特徴やライフサイクルが分かれば、魚の代謝を上げて自然治癒を促進しているのではなく、病の芽を摘んでると言うことが理解できるのではないでしょうか!?


では次に高温治療のデメリットについて考えてみましょう。



上でも書いたように高温にすることで病の芽を摘むことはできます。しかし高温治療はその期間や温度によって魚自体の体力を奪い、酸欠を引き起こし反対に弱らせてしまう危険性もあります。 ご存知のように高温にすればするほど水中の溶存酸素量が減り極端に酸素レベルの低い飼育水になってしまいます。溶存酸素量が減る原因は水温が高くなると曝気したとしても酸素が水に溶け込める量が減るからです。 

(水温と飽和溶存酸素量の表参考)

mg/L mg/L mg/L mg/L
1 13.77 11 10.67 21 8.68 31 7.42
2 13.40 12 10.43 22 8.53 32 7.32
3 13.05 13 10.20 23 8.38 33 7.22
4 12.70 14 9.98 24 8.25 34 7.13
5 12.37 15 9.76 25 8.11 35 7.04
6 12.06 16 9.56 26 7.99 36 6.94
7 11.76 17 9.37 27 7.86 37 6.86
8 11.47 18 9.18 28 7.75 38 6.76
9 11.19 19 9.01 29 7.64 39 6.68
10 10.92 20 8.84 30 7.53 40 6.59

一般に魚介類が生活できる限界が3mg/L以上、同時に微生物も2mg/Lの酸素を消費します。しかしこれは生存限界であり、水槽で魚を飼う場合、単純に5mg/Lで飼えるわけではありません。 水槽に魚を入れて濾材を入れた場合、バクテリアが定着すると大量の酸素を消費するし、魚を入れると当然、酸素の消費量は激しくなります。 一般的に水槽で魚を飼う場合、適量のバクテリア、適量な魚の数を入れた場合、7.50mg/L以上の酸素が必要だと言われていますので不足分をエアレーションで補うことになりますが、高水温では、その溶け込める酸素量が決まっているので、エアレーションして水中に放出した酸素のほとんどが水に溶けることなく大気中に放出されることになり、慢性的な酸欠状態を引き起こし、魚の代謝が極端に低下し、エラや細胞が酸欠により損傷を受けます。

ディスカスのヘキサミタ治療にしばしば見たり聞いたりするフラジール(メトロニダゾール)+35℃設定というのがあります。 確かに魚がその高温に耐えるだけの体力があれば有効なのかもしれません。しかし35℃という水温は魚にとって生存限界ギリギリ。(魚種によっては生存限界をはるかに超えています。) 基本的に一般魚の高水温下での生存限界は32℃。 これ以上の水温に耐えることができるのはディスカスやラビリンス器官を持つアナバス、一部の古代魚だけです。 
しかし水温がここまで上げれば、代謝を上げるというレベルではなく人間で言えばサウナの閉じ込められてるようなもの・・・。 丈夫な個体ならともともかく、拒食で体力の落ちた個体では生きるか死ぬかの状態でしょう。 おそらく半分以上棺桶に尾ビレを突っ込んでいると言っても過言ではないはず!?

また、エラ病になった時に水温を上げたりするように指示している専門書もたまに見かけますが、私の考えでは、これは絶対にやってはいけないこと! エラ病はエラに何らかの障害があって呼吸困難の状態になっているので、その状態で水温を上げると溶存酸素量が減り、エラに更なるダメージを与えることになります。

幸い日本では病魚薬や駆虫薬など安全で効果のある薬が何種類も市販されているので、極端な高温治療をしなくても治療は可能です。 この記事の共感頂けたならこれを機に高温治療の意味とメリット、デメリットについてもう一度検討頂き「病気=高温治療」ではなく「原因追求→症状の把握→原因に応じた対策」を冷静に判断すれば高温にしなくても治療できることが分かるはずです。

最後に・・・。 これから本格的な夏を向かえますが、夏場の高水温は上で書いたようなデメリットが該当すると思います。 夏場の水温上昇はクーラーなどの設備がなければ防げないものですし、体力のない小型魚にとっては最も死亡率の多い季節ともいえます。 ですから通常以上にエアレーションを強めて魚が一番美しく輝く秋に向けてストレスのない飼育をしてあげましょう!
コメント(18) 
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コメント 18

dai8682

毎度~!
「病気=高温治療」と思っていた一人です
いや~ホント、お恥ずかしい^^;

今回の記事を読んで、色々学ばせ頂いたことは勿論ですが、
「原因追求→症状の把握→原因に応じた対策」を冷静に判断すれば高温に
 しなくても治療できる」
ことが分かったことが一番の収穫でした!
ありがとう、たかあきさん!
by dai8682 (2007-07-25 02:03) 

たかあき

daiさん

大阪は梅雨明けちゃって昨日から本格的な夏ですよ~
水槽温度も勝手に30℃超えちゃってるし~
・・・ってことで高温治療について書いてみました。

薬使わずに水温あげるだけで治せればいいんだけどね~
高すぎるとやっぱり危険だわね。(^^)
by たかあき (2007-07-25 10:05) 

グータン

いや~勉強になりました^^’。
高温=病気治療・・・かなり危険と隣り合わせなんですね~。
以前高温治療した時にグリーンの目が(正式には目だけ)大きくなって
しまった事があります・・・。
それから怖くて高温治療は控えていますが、何か関係があるんですかね~?
by グータン (2007-07-25 10:33) 

たかあき

グータンさん

目が大きくなったんですか? 高温にして数日で?
なんでしょう!? 数ヶ月高温で飼育すると、代謝があがり早く老化して
目だけが大きくなることはあるけど、短期間であれば・・・なぜでしょう!?

あまりそういった症例は聞いたことないから分からないですね~。

だた、長期高温飼育は確実に寿命を縮めることは確かです。
よくも悪くも成長が早くなって、しわくちゃになったりすることがありますね。

あと、高温+塩+ホルマリンで数日飼うと、急激にしわくちゃになります。
これはホルマリンと塩で脱水状態になるからみたいですけどね。
by たかあき (2007-07-25 10:51) 

discupo

今回の記事も勉強になりますね。保存しておこうっと。
ここ1~2ヶ月、高齢魚の衰弱が激しいのですが、水温が高いのも
原因かもしれないですね。
夕方、仕事から帰ってくるとだいたい31~32℃になっているので、
最近はこまめに水換えをしています。
by discupo (2007-07-25 13:10) 

たかあき

カポちゃん

岡山ってこっちより涼しくなかったっけ?
昔、親戚が津山に住んでたんだけど、冬は大雪だし、夏も涼しかった
ような記憶があるんだけど・・・。
まぁ~岡山も広いから気候は違うよね!?
・・・にしても、この時期で32℃はキツイね~
8月中旬になると35℃近くまで上がっちゃうんじゃない!?

高齢魚にとって高温っ結構厳しいよね~!?
それでなくてもヨボってきてるのに、もし35℃近くまで上がるとなると
かなりハードだわね~

やっぱり新水注入方式が一番だね!
綺麗な地下水とか出たら水道代気にせずに新水注入でいくのに・・・。
先月水道代5万近く請求きたよ。(^^ゞ
by たかあき (2007-07-25 13:24) 

私も、病気=高温治療と思っていた一人です。

でも、以前は高温治療をしていましたが、最近ではしてないんです。
理由は、高温にしても結果が出た事がないから、
高温にして体力だけ奪ってしまいそうで、不安だったんです。
結局、原因に応じた対策が出来ていなかったんですよね。

今でも、原因追求の所で散々迷ってしまいます(^_^;)
by (2007-07-25 16:21) 

たかあき

motoさん

高温治療しても結果がでない・・・。 そうですよね~
ちょっとエサ食いが悪いとか、ちょっとスレが早く治るなどといった
ちょっとしたことに関しては、それなりの効果はあるけど、いざ病気ってなると
水温を上げたからといって何も改善しなかったりしますもんね!?

原因追求・・・。
うちでは片エラや呼吸が早い時は水質かカラムナリス、吸虫。
エサ食いが悪い、糞の色が変・・・・って時はストレス。
この2つがほとんどで、水換えやphをいじって改善がない場合は
照明を消してエルバ+プラジって感じです。

ディスカスの場合、目に見えて出る症状って3~4パターンなので
総合治療って感じでやってます。
by たかあき (2007-07-25 20:15) 

akisono-happyhappy

すいませ~ん

前回の記事で取説書いて頂いて有難う御座いました。
僕用!?の保存版にしておきたいと思います。(^^)
色々、試しながらやってみます♪

今、会社のPC(VAIO)が不調でSEの方に見てもらったんですけど
SONYへ修理に出した方がいいかもって言われました。
数回、エラーの履歴が残ってて変な音がするんです(^^;
このPCにPHOTO SHOPが入っているので当分加工は難しいみたいです。

今回の記事もスゴイ勉強になりました(^^)
by akisono-happyhappy (2007-07-25 22:25) 

たかあき

akisono1さん

変な音? HDでも壊れたかな!? カラカラって音じゃなかった?
まぁ~メーカー修理ならちゃんと修理してくれるでしょうね。

VAIOは結構壊れにくいんだけどね~
早く復活してくれないとphotoshop使えないね。(^_-)
by たかあき (2007-07-25 23:15) 

asama

管理人さん、皆さん
はじめまして、asamaと申します。
ディスカス飼育を6月から始めました。
アフリカンシクリッドを10数年飼育していましたが、専門店の移転と穴あき病の蔓延等により、アフリカン飼育を断念して、3年後新たにディスカス飼育を始めた次第です。
ディスカスサイトで十分に調べてから水槽の水つくりを行い、ディスカスを購入いたしました。
こちらのサイトはコメント、写真など内容がすばらしく、現在は毎日欠かさず見させていただいて未熟な経験しかない私の教科書として参考にさせていただいております。 感謝いたしております。
今回の病気に関する説明を見させていただいて、大変参考になりコメントをせずにいられなくなった次第です。

現在は120×45の水槽で幼魚サイズを15匹ほど育成しています。
他に60のワイドを予備水槽として稼動させています。
現在不安なのは数匹に頭部穴あきの症状では?と見られる個体があることです。 先に述べましたようにアフリカンを断念した大きな原因が穴あき病の蔓延だったのもですから、今は毎日心配で仕方がありません。
昨日水温を31度にあげ、フラジールを3錠投与しました。

初めてにもかかわらず長々と申し訳ありませんでしたが、これからも管理人さんはじめ常連の皆さんにディスカス飼育に関してのアドバイスを頂きたく宜しくお願い致します。
          asama
by asama (2007-07-26 10:51) 

たかあき

asamaさん、 はじめまして。(^^♪
アフリカンを長年やっておられたんですね~ 私ももともと大型ばかり
やっていたのでフロントーサなども飼ってました。

シクリッド特有の穴あき・・・厄介ですよね。
今まで飼っていて何となくですが、水槽内で発生するっていうより
先天性の免疫が問題のようにも思えるのですが・・・。
根拠はないですけどね。(^^ゞ

ウチでは頭部穴あきの傾向がある場合、粉末にしたフラジールを解凍した
ハンバーグや赤虫に少量ふりかけて直接食べさせるようにしています。
また、初期症状(ニキビや小さな穴)が確認できた早い段階でエルバで
穴があかない、進行しないようにするようにしてます。
初期であれば、この処置でほとんど止まってます。

エロモナスの穴あきとは違って管理だけでは未然に防ぐのが難しいですけど
お互いに頑張りましょうね。(^_^)


これからも色々と情報交換&コメントよろしくお願いします。
by たかあき (2007-07-26 11:54) 

T.T

今晩は、この前の麦飯石の件有難う御座いました。
私は、今年から高温治療せず、薬でセラのトレマゾル・プロタゾル・ネマトールで予防してみようと思います。
by T.T (2007-07-26 20:27) 

たかあき

T.Tさん

セラ・シリーズですね!(^_^)v
高温は寿命も縮まるし、エラにもあまりよくないし、何より酸素レベルの
低い水では、色々不安定になりやすいので、適切な治療のタイミングを
適切な薬で十分だと思います。

セラ・シリーズはあまり使ったことないので、何か情報やデータがあったら
また教えてくださいね。 よろしくお願いします。(^_^)
by たかあき (2007-07-26 21:32) 

七彩艶

こんばんは 始めまして 大連の七彩艶といいます、
これからチョクチョク遊びに来ますのでよろしくデスm(_ _)m
麦飯石がこんなにいいとは知りませんでした、今 珊瑚で調整していたんで
すが、今度町で買って来て交換します。
この辺は日本よりは安く大量に手に入るかも知れないのでラッキーです^^;
いい個体は中々手に入りませんが。
では又よらせてもらいます
再見
by 七彩艶 (2007-07-28 02:07) 

たかあき

七彩艶さん、こんにちは。
中国、大連からの書き込み、ありがとうございます。(^^♪
本場中国なら安くて上質の物が手に入るでしょうね!?

薬用石として明代の李時珍の「本草網目」でも紹介されてたみたいですね!?
見つけて実用した中国人ってすごいですね~
by たかあき (2007-07-28 13:15) 

たまらこ

超ごぶさたです。
下痢と拒食以外には高温治療した事ないですが、私があるブリーダーさんから教わった方法は、
1.水温は一気に(1,2時間で)34度まであげる.エアレーションは十分行う.
2.あまり水替えしなくて良いようにする(残り餌は2分以内に取り除く等)
3.34度保持期間は必ず一週間までとする
4.下げる時は1日1度とし、完全に同じ温度になってから元の水槽にもどす
5.治療完了していない場合は一週間まってから繰り返す
です。
 これで一例を除き全てうまく行きました。本水槽に戻してから食欲回復する場合もありました。
 失敗の一例は、エアレーションが気付いて見たら極端に弱くなっていた時です。
エアーは必ず強めにして、もし水流が発生しディスカスに不可がかかりそうな時はネットなどで弱めるなど工夫するべきだったと思います。
 尚、私は隔離高温治療では、生物濾過は用いず、アンモニア,亜硝酸吸着樹脂露材をもちいています。

 さあて! 明日チョコグラちゃんのペア980円セールに朝から並ぶぞっっ!!!
by たまらこ (2007-07-29 01:23) 

たまらこ

あ,チョコグラじゃなく、ゼブラチョコグラ、すなわちバイランティ3ペアです。ゲットして来ました。チョコグラ3匹と同じ水槽にいれちゃいました。
by たまらこ (2007-07-30 00:50) 

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